なんとしても小説家になりたい青年を描いた折原一著の「倒錯のロンド」

折原一さんの「倒錯のロンド」を読みました。

(令和3年1月20日追記)令和3年1月15日に「倒錯のロンド 完全版」が発売されました。(記事内のリンクを完全版に変更しています。)

(Amazonより)

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あらすじ

小説家になりたい青年が新人賞に応募するために書き上げた作品。その作品が倒錯された。二転三転する物語。誰が僕の小説を倒錯したのか?

雑感

この作品はすでに数回読み返しています。かなり好きな作品です。(2021年1月15日に「倒錯のロンド 完全版」が発売されましたが、筆者は未読です。)

(以下、ネタバレあります。)











ネタバレあり

小説家になりたい主人公の青年。新人賞に応募しようと小説を書き始めようとしますが、なかなか筆が進みません。

実際の小説家がどのように仕事をしているのかは知りませんが、有名作家のMさんが、なにかの雑誌に(小説は)「とにかく書き始めること」と答えていたので、書き出しの言葉に迷ってばかりいると、作品の完成はありえないのかも知れません。

「倒錯のロンド」の前半部分、主人公の青年はダラダラとした生活を送ってしまい、原稿用紙に題名を書いたあと最初の一文がなかなか書き出せない描写が続きます。炬燵のなかから桜を鑑賞したり、友人と飲みに行って酔っ払い、風邪をひいてしまったりと、一文字も書けないのです。

でも、私はこのダラダラとした描写が好きです。ゆっくりと過ごせる時間がうらやましい。

その後、主人公の青年は、とあるきっかけで猛烈な勢いで作品を完成させます。

しかし、その大事な原稿を紛失してしまいます。

ここから物語の雰囲気がガラッと変わります。それまでのダラダラした感じがなくなり、倒錯者と主人公の狂気が描かれていきます。

ダラダラした描写と緊張感のある描写が物語にメリハリをつけてとても良いです。(繰り返しになりますが、私はダラダラとした描写が好き。炬燵からみる窓の外の桜。いいですね。)

実際には、新人賞の応募作品のなかで誤字脱字の多い作品や原稿用紙を正しく使えていない作品は、下読みの人にさえも読んでもらえないようです。また、「倒錯のロンド」のように過去に似た作品があれば、その小説の分野についてある程度の知識がある下読みの人たちに排除されてしまう気がしますね。

作品情報

出版社、出版年月等

単行本;1989年 講談社

文庫本;1992年 講談社文庫

(2021/1/15 倒錯のロンド 完全版)


_/_/_/_/_/_/_編集後記_/_/_/_/_/_/_

久々に記事を書きました。